日本のお風呂をもっと楽しもう『湯の国』
お風呂をもっと快適に、お風呂をもっと楽しむために
湯煙コラム

Vol. 60 黒沢あすか

親から子へと伝える、わが家の「お風呂作法」

黒沢あすか(くろさわ あすか)

1971年生まれ。神奈川県出身。
子役からキャリアをスタート。テレビドラマを始め、数々の映画に出演。2002年にはベネチア国際映画賞審査員特別大賞を受賞した塚本晋也監督の『六月の蛇』に主演、2003年オポルト国際映画祭最優秀主演女優賞を獲得し、国内外に高い評価を得る。『嫌われ松子の一生』(2006、中島哲也)『女の子ものがたり』(2009、森岡利行)『冷たい熱帯魚』(2011、園子温)など出演作品多数。
趣味・特技は写真、作詞。ホームヘルパー2級の資格を持つ。
2012年シネクイント他全国順次ロードショー 園子温監督『ヒミズ』に出演。

黒沢あすかオフィシャルブログ「Asukamera」
 
わが家には12歳を筆頭に、5歳、3歳の男の子がいます。今でこそ長男は一人でお風呂に入るようになりましたが、下の二人といっしょに入るバスタイムは、それはもう慌ただしいのなんの。人に話すといつも驚かれるのですが、うちでは子どもたちを次々に髪の毛から足の先まで丸洗いして、シャワーで一気にバシャーッと頭からお湯で流すのが定番です。みんな最初は「シャンプーが目に入る!」「熱いよ!」なんて大騒ぎしていましたが、いまでは結構楽しんでいますよ。

私は健康の基本は睡眠にあると思っているので、とくに睡眠の必要な幼児期には、午後9時までには寝かせるよう、一日のスケジュールを組み立てています。夕食からお風呂までのあいだが勝負なので、少しの時間も惜しんで丸洗いするというわけです。

いっけん“手荒い”洗い方ですが、じつは今に始まったことではなく、私の子ども時代にも、父が私を手加減なしでゴシゴシ洗って熱いお風呂にドボンと放り込んでいたのを思い出します。当時はいやで仕方がなかったのですが、気づくとこんなところが似ていて、不思議なものですね(笑)。
また、子どもは幼稚園や小学校に通い始めると、親の目が届かない時間が増えるので、お風呂場で傷やアザがないか、その日の状態を全身チェックするのもポイントです。私も夫も芸能関係の仕事をしていますが、家庭環境は一般の方と何ひとつ違わないんですよ。

たとえば万が一、子どもが怪我をして帰って来たとして、それは自分の失敗ではなく、誰かとケンカをしてきたかもしれません。じゃあ原因は?相手のお子さんは大丈夫かしら?など、「大ごとになる前に、学校や地域と連携を取らなければならない場面があるかも」ということを念頭に観察します。そんなちょっとした気遣いが、さまざまな問題の芽を摘めるかも知れないですからね。つまり私にとってお風呂とは、「体を洗ってのんびり温まる」以上の大切な意味を持っているのです。

とはいえバスタイムは、何よりのリラックスタイムだと実感しています。なにしろ子どもたちは、それまでどんなに騒いで気持ちが高ぶっていても、湯船につかってじんわりと温まり、パジャマに着替えるころにはすっかり気持ちも落ち着いて、ここちよく眠りにつきますからね。
もちろん、私にとってもお風呂は大事な休息の場でもあります。温泉も好きで、以前は両親を誘ってよく箱根へ日帰り温泉旅行をしていました。

最近は忙しく、なかなか出かけることができないので、かわりに季節のハーブや果実などから薬湯を作って楽しんでいます。もともと母が実家に生えていたよもぎ、どくだみ、ゆず、みかんの皮などを使って手作りしてくれていたんですね。お金を出せば市販の入浴剤も手に入りますが、自宅で育てたセージやミントなどの植物をさらしの袋に入れてキュッキュッと揉みこめば、それだけでも自然のアロマに包まれていい気分。時季ごとに採れる身近な草花を使うことで、お風呂の中から四季を感じることもできます。
こうしたさまざまな体験は、自分自身で意識しなくてもいつの間にか体に染みついた「お風呂作法」。子どもたちの心にもどこか残り、将来お嫁さんと実家のお風呂の入り方をネタに、楽しい会話を繰り広げてもらえばいいなあと思っているのです。

文/黒沢あすか(くろさわ あすか)
舞台「クロイツェルソナタ」

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