「ココロほぐし浴ゆるる」ノーリツ明石本社工場見学
この春、ノーリツから新しく発売された、手もみ感覚の気泡浴を楽しめる「ココロほぐし浴ゆるる」。プレスリリースを読むと、これまでにない新感覚のお風呂らしい。 “あたたかい手でもみほぐされているような心地よさ”って、大いに気になるッ!しかも、女性を意識した製品というだけあって、商品開発には女性(しかもヤングな!)が携わったとのこと。
新しいお風呂が生まれる現場ってどんなだろう?どんな人たちが研究開発しているんだろう?気になったら自分の目で確認すべし!ということで、早速ノーリツさんの明石本社工場へおじゃましてきました。
「ココロほぐし浴ゆるる」とは?
浴槽のノズルからお湯と気泡が回転しながら噴出させ、リズミカルに背中を刺激することで、まるで“あたたかい手でもみほぐされているような心地よさ”を実現した、気泡浴のできる浴槽です。
・商品ページはこちらです!
見よ、このモダニズム建築的社屋!こちらがノーリツ明石本社工場のメイン社屋。なかなかオシャレです。ノーリツ明石本社工場は、播磨灘に浮かぶ埋め立て地にあります。側には緑豊かな海浜公園があるので、休憩時間にランニングをする社員さんも多いらしい。いい環境ですね。
敷地に入ってすぐ目に付いたのが、ソーラーパネルの数々。建てたばかりという、環境配慮商品を専門に研究・開発する新社屋に至っては、陽の当たる場所一面にソーラーパネルが。ノーリツは太陽光発電・太陽熱利用システムの研究開発にも力を入れています。
左から、研究開発本部の野中隆さん、古賀弘子さん、小川恵里奈さん、東影亘彦さん。ご挨拶もそこそこに、まずは実物を……ということで、研究棟の一角にわざわざ用意してくださった「ココロほぐし浴ゆるる」の元へ。
実際に噴流を触らせていただきました。こ、これは!空気が粒となって心地よいリズムで当たってくる。その リズミカルなこと!
ジェットバスというと、強い噴流が一カ所にゴーゴーと当たり続ける印象が強いんですが、その点、「ココロ
ほぐし浴ゆるる」は噴流が穏やかなうえ回転しているので、通常のジェットバスでありがちなピリピリとしたかゆみが起こりにくいと言う。
個人的にはジェットバスの強いだけの刺激が苦手だったので、こうした“手もみマッサージ感覚”の穏やかジェットバスの登場は喜ばしいかぎり。ほわ〜、ホントに気持ちいい〜。
●叩く、揉むというイメージのジェットバス
「ココロほぐし浴ゆるる」開発のきっかけとなったのが、いつも「お風呂のオプションに欲しいものランキング」の上位にあがる人気の“ジェットバス”をリニューアルして新しく商品化できないか…という考えだったとのこと。
これまで、ジェットバスは勢いが強ければ強いほどいいという風潮があったが、それに疑問を持った東影さん。「噴流を強くするのではなく、噴流の当たりを変える、例えば、叩く、揉むというようなイメージはどうか?」という発想に至り、研究開発に着手したそうだ。
実際、ジェットバスについて意見を求めると、女性陣からは「これまでのジェットバスは強すぎる」という声もあり、東影さんは「柔らかい噴流のジェットバス」に需要があることを確信。
そこに新入社員だった小川さんが加わり、女性の意見をダイレクトに取り込む環境が整う。実際、小川さん自身、何度も体感入浴を繰り返した他、社内の女性たちに声をかけて体感入浴をしてもらい、女性たちの意見を集約すべく奔走したという。
●背中の重さをすっきりさせる“筋のよい商品”
一方、要素技術研究部に所属する野中さんと古賀さんは、開発中の商品(後の「ココロほぐし浴ゆるる」)の効用について検証を始める。検証の結果は東影さんたちにフィードバックされ、さらに開発が進められていく。東影さんから初めて商品説明を受けたときの感想を尋ねると、野中さんは「筋のいい商品だなと思った」という。
「ココロほぐし浴ゆるる」は、2本のノズルからお湯と気泡が回転しながら噴出するのだが、それが広範囲にわたって脊柱起立筋群を刺激。結果、背中の重さがすっきりし、温熱感を持続させ、血のめぐりを実感できる。野中さんと古賀さんは、効用をより確かなものにするため、外部の人たちに被験者となってもらいデータ収集を行った。データが溜まっていくにつれ、十分効果があることもわかり、開発もいよいよ大詰めに。
●回転数を落とすために
開発中、一番苦労した点について問うと、東影さんと小川さんは「回転数を遅くするために羽にわずかな傾きを加えているんですが、その調整が大変で……」と言いながら、構造部分が見えるよう切断された噴出口を見せてくれた。その傾きは、パッと見ただけではわからないほど、極々わずかなもの!
「ココロほぐし浴ゆるる」は水流だけで回っているので、ちょっとしたことで回らなくなってしまう。回転数を上げた方が安定するが、“揉み”に近い感覚を生むためには回転数を落とさなければならない。
また、回転数が高くなると体が微振動を感じるようになり、これまでのジェットバスと同じように、皮膚のかゆみも発生してしまう。「とにかく、回転数は落としてください」という野中さんの依頼を受け、東影さんと小川さんは角度の微調整を繰り返したとか。相当に根気のいる作業ですね。
●できるだけシンプルに…ノーリツらしいオリジナリティを…
また、東影さんのこだわりのひとつに、「できるだけシンプルな仕組みに」というのがある。シンプルであればあるほど、壊れにくくなるし、価格も抑えることができる。より多くのお客さまに使っていただくために、ここははずせないポイントなのだという。
ノーリツの商品はオリジナリティが高い。「半身浴用ベンチ付浴槽」を初めてシステムバスに取り込んだのもノーリツだし、スイッチひとつでお風呂が沸く「全自動風呂釜」を初めて世に広めたのもノーリツだった。発売時には湯の国スタッフの間でも話題になった「おそうじ浴槽」もノーリツの商品。東影さん曰く、「我々のチームの使命として、ノーリツらしいオリジナリティのある浴室空間を生む商品を開発していこうというのがある んです」
ここから先が工場の心臓部。中は企業秘密がいっぱい。ちょうどお昼休みだったので、中は電気も消えてシーンとしていました。
組み立てられた全ての製品は、実際に水とガスを通し、1台1台燃焼し、確実に検査を受けて出荷されていきます。
「ようそこ生産ラインへ」のパネル裏には「ありがとうございます」と書かれていました。会社から社員への
御礼の言葉なのかな?今日も一日ありがとう、みたいな。
工場の裏では、出来たてほやほやの製品たちがトラックに積み込まれていました。14時までに受付した注文は、基本当日中に工場から出荷するそうです。給湯器が故障してしまったお客さまに、少しでも早く商品をお届けしたい!という想いから、このような出荷システムが整えられたとか。
広い工場内には専用のバス停が。と思ったらタイミングよくバスが来ました。おおッ!行先表示幕には「NORITZ」の会社ロゴが!バス自体も専用なんですね〜。さすが!
今回の社内見学で、わたくしライターKが一番はしゃいでしまったのがここ!メイン社屋のエントランスに
ある、歴代の製品コーナー。ホント、楽しすぎました。
まずはこちらをご覧ください。昭和30年代に走らせていたという宣伝カー。今じゃお馴染みの宣伝カーですが、なんとノーリツの創業者であり名誉会長の太田敏郎さんが発案者なんですって!のぼりを立てたり、看板載せたり、さらには軍艦マーチかけたりして街中を走行したそうな。太田さん、アイディアマンだったんですね〜。「みんなよろこぶ愛の風呂」ってコピーもイカしてる!
さらに、ポンティアックの横にはこんな一筆が。創業者であり名誉会長の太田敏郎さんがしたためた「お風呂は人を幸せにする」の書。いや〜、ほんと、お風呂愛に溢れてるッ!
今さらですが、「ノーリツ」は「能率」だってこと、ご存知でしたか?現在は「株式会社ノーリツ」が正式な社名ですが、1951年の設立時から1968年までは「能率風呂工業株式会社」という社名でした。カタカナになっただけで、ずいぶん印象が違いますよね。
順を追って見て行くと、給湯器の変遷によって、その時代の特徴が透けて見えるのもおもしろかった。
1984年に発売された「サウンドホンリモコン」(写真左)には、台所側に“カラオケ端子”が!この端子にステレオをつなぐと、お風呂側に音楽が流れてお風呂カラオケができるというアイディア商品。カラオケボックスが流行し始めたのもこの頃ですもんね。ちゃんと時代を反映しています。
それにしても、ノーリツさんの製品は本当にオリジリティが高いなぁ。今後もどんどん独自路線を突っ走っていただきたいです。
最後に……。工場見学でのぞいてみたい所といえば、やっぱり社員食堂!ですよね?ちゃんと押さえてきましたよー。
ちょうどお昼時だったので、食堂内は社員さんでいっぱいでした。お弁当持参派の姿もチラホラ。
数あるメニューの中で気になったのはこれ。「そば飯」と「台湾ラーメン」。社食にそば飯とはさすが兵庫県!ちなみに人気メニューは、カロリーと塩分を控えめにした「日替わりの健康弁当」。女性陣からは350円で食べられる「ミニ弁当(みそ汁付き)」も好評なんですって。おいしそう!
さて。今回の「風呂文化研究会×湯の国」のレポートはいかがでしたか?こんなことをレポートしてほしい!というご希望のある方は、ぜひこちら(リンク)までご意見をお寄せください。
ノーリツのみなさん、ご協力ありがとうございました。次回の更新は9月の予定です。お楽しみに。