私は近所に大学からの友人で碁敵がいます。囲碁のレベルはほとんど同じで勝つか負けるかはものすごく精神的なもので決まります。余裕があるか焦りがでるかの紙一重の勝負。それでも勝てば王様、負ければ足軽気分。勝利すれば「もう少し勉強してくれよ」と相手をとことん見下せる一言が発することができます。この一言のため二人は必死の死闘を繰り広げるわけです。負けたときの悔しさたるや、目にうっすら涙が溜まるほどです。便所に行くといって、何度顔を洗ったかわかりません。それ程ですから、もう勝利した夜のお風呂の至福感はお分かり頂けるでしょう。喜びは100倍、地球が祝福しているような気分になれます。
お風呂に哲学は似合いません。情緒的なるもの、とくに喜びを溶かす場所、それがお風呂です。さあ、これであなたもお風呂の達人になれます。
文/きたろう
イラスト/花岡道子