日本のお風呂をもっと楽しもう『湯の国』

お風呂をもっと快適に、お風呂をもっと楽しむために
わが家の風呂づくり Vol.1「ジャングル風呂」TOP12

鈴木さち子さんのお宅のお風呂は、2階まで吹き抜けた温室のような部屋です。つややかな植物の緑と差し込む光があふれる室内。階段にすわってお茶でも飲みたくなるような、そんな不思議な空間です。考えてみれば、家族4人が入浴するのは1日のうち3時間もかかりません。使わない時間の方がずっと長いはずです。それならば、こうしてもうひとつの部屋として使うのも案外楽しいかもしれません。
家族も満足、お客様にもちょっと自慢したくなるというこのお風呂、実はリフォームの時、思い切った発想の転換から生まれました。きっかけは、築20年たつ家の間取りが使いにくいということでした。
 
「客間、リビング、茶の間と部屋が並び、キッチンなどの水まわりは北側。廊下もあったので細長いばかりで何かと不便でした」
リフォームをお願いした建築家の郡裕美さんには「キッチンを使いやすく」「家で仕事をするので書斎を」「細長くて狭いリビングを広く」の3つの要望を出しました。
何とか建物のつくり(構造)を変えずに、鈴木さん一家の暮らし方に合うように変えられないものか―――パズルのように考えて生まれたのが、1階をほとんどワンルームのように使うプラン。同時に提案されたのが、このお風呂だったのです。
吹き抜けから浴室を見下ろしたところ。
左の壁と植物を置く“舞台”には、耐水性に優れたサワラを使用。
温室であり階段室でもあるこのお風呂は、どのように生まれたのでしょうか?
さちこさんは洗濯物を干すのに、いちいち玄関にある階段を上がり2階の物干し場に出なければならず不便に思っていました。また、園芸が趣味のご主人は温室がほしいと考えていました。さまざまな道具があり、外にも収納が必要でした。郡さんの頭の中にこれらがインプットされ、そして、これらを一緒にして広い空間にしようという提案になりました。
かなり大胆な発想で、郡さんも提案する時はおそるおそるだったそうですが、さち子さんたちの「へぇ、おもしろそうじゃない!」という一言で決まりました。浴室の隣にある洗濯機で洗い終わった洗濯物は、浴室の階段を上がって2階の物干し場へ。庭にある鉢やプランターは、寒い季節になると2階の“舞台”や階段に移されます。庭から出し入れする物置は浴槽後ろの踊り場の下。これは150cmの壁になり、外からの視線を遮ります。
さて、これだけ天井が高いと、冬の寒さが気になりますが、さち子さんは友だちの家などで床暖房を体験していたこともあって、最初から床暖房にしたいと考えていました。
フローリングを敷いたリビングだけでなく、ご自慢のお風呂にも床暖房です。ただ天井が高い分、床だけではなく壁面にも設置して2方向から暖めています。昼も夜も、1年中楽しみたくなるお風呂です。
「夫も子どももお風呂に入ったらなかなか出てこないんです。それが一番変わったことかしら」と笑うさち子さんです。
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