鈴木さち子さんのお宅のお風呂は、2階まで吹き抜けた温室のような部屋です。つややかな植物の緑と差し込む光があふれる室内。階段にすわってお茶でも飲みたくなるような、そんな不思議な空間です。考えてみれば、家族4人が入浴するのは1日のうち3時間もかかりません。使わない時間の方がずっと長いはずです。それならば、こうしてもうひとつの部屋として使うのも案外楽しいかもしれません。
家族も満足、お客様にもちょっと自慢したくなるというこのお風呂、実はリフォームの時、思い切った発想の転換から生まれました。きっかけは、築20年たつ家の間取りが使いにくいということでした。
「客間、リビング、茶の間と部屋が並び、キッチンなどの水まわりは北側。廊下もあったので細長いばかりで何かと不便でした」
リフォームをお願いした建築家の郡裕美さんには「キッチンを使いやすく」「家で仕事をするので書斎を」「細長くて狭いリビングを広く」の3つの要望を出しました。
何とか建物のつくり(構造)を変えずに、鈴木さん一家の暮らし方に合うように変えられないものか―――パズルのように考えて生まれたのが、1階をほとんどワンルームのように使うプラン。同時に提案されたのが、このお風呂だったのです。
| | 吹き抜けから浴室を見下ろしたところ。 左の壁と植物を置く“舞台”には、耐水性に優れたサワラを使用。
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