日本のお風呂をもっと楽しもう『湯の国』

お風呂をもっと快適に、お風呂をもっと楽しむために
わが家の風呂づくり Vol.4「ガラス・ボックスの風呂づくり」TOP1
大阪で暮らすTさんには、2人のお子さんがいます。それぞれ住まいが東京とイギリスで離れているので、休みの時は3家族が集まって過ごせるように大阪と東京の中間であるこの地に別 荘を建てることにしました。緑豊かな傾斜地をうまく生かしたこの家を設計したのは、建築家の飯田善彦さんです。
洗面コーナーは木製の長いカウンターを渡しただけのようなシンプルなつくり。緑と光あふれる気持ちのよい場所です。
2階にある浴室は隣家が遠く、道路からも離れているので、のぞかれる心配がありません。夜は、頭上に満天の星が楽しめます。

飯田さんが提案したのは、いつも自然を身近に感じられるような別 荘ならではの空間です。
 家族が集まってくつろぐための広間の棟と、1階に寝室、2階に浴室のある棟を並べ、それぞれ雰囲気を変えています。1階の寝室は床近くに窓をとったコンパクトで落ち着いた部屋。そこから長いスロープを歩いて2階にでると、それまでとは一転して、壁から天井までガラス張りの開放的な浴室に出ます。「木々の梢に縁取られた天空を全身で受け止めることができ、自然とコミュニケートすることで、身も心もリラックスできると考えました」
隣家は離れているし、2階だから心配ないとはいうものの、日常的な感覚からいうとここまで開放的だと不安を感じる人もいるかもしれません。ところが、腰までの壁で覆われているという安心感がありますし、気になる人は取り付けたロールスクリーンを下げて入浴できます。でも実際はあまり使わずにこのまま入浴することが多いようです。この別 荘にいると、緑に囲まれて気持ちも開放的になり、のぞかれる不安より、季節の移り変わりや時間の流れの中でお湯につかる――そんな心地よさを大切にしたくなるのです。
隣には浴室と同じ広さのテラスがあって、その先の階段は1階の寝室につながっています。テラスは湯上がりのひと休みに最適で、天気のよい日などは日光浴にもよさそうです。くつろぐ楽しみがさらに広がっていきます。
「浴室は、裸になって心身ともにリラックスする場所。僕は住宅を設計する時も、浴室を一番いい場所にすることが多いです。条件がゆるす限り、できるだけ眺めの良さや開放感を感じさせることを優先させています」
テラスから浴室を見たところ。木立の中に浴室が突き出したように見えます。
1階は寝室で、離れのような空間になっています。


〈DATA〉
設計/飯田善彦建築工房(飯田善彦)
撮影/村角創一
協力/『湯快ページ』